制作者談義:法人化した当時、「マイクロ法人」という言葉はなかった

私自身、法人を持っています。ただ、最初から「マイクロ法人」を作ろうと思って作ったわけではありません。15年以上前、法人化を決めたときは、そんな言葉自体がまだありませんでした。当時の感覚では、法人化は「人を雇うタイミング」でするものでした。

きっかけは単純で、売上が1,000万円を超えることが確定し、経費率は20%にも届かない状態になったことです。利益率が高いということは、それだけ税負担も重くなります。加えて、個人事業のまま売上1,000万円超が続くと消費税の課税事業者になりますが、法人を新しく作れば、その免税期間を最大2年分リセットできる。経費を作る必要もあったので、法人化に踏み切りました。

社会保険の運用が変わり、「マイクロ法人」的な形に

当時は社会保険の運用も今よりずっと緩く、役員報酬をそれなりに高く設定しても、実質的に国民健康保険で回せてしまう、というようなこともありました。ところが、その運用ができなくなり、社会保険への加入がきちんと求められるようになりました。

そこで、役員報酬を最低限に抑えて、社会保険料そのものを最小化するという運用に切り替えました。結果として、今で言う「マイクロ法人」(役員報酬を絞った、実質ひとり社長の法人)の形になった、というのが実際の経緯です。狙って作ったというより、制度の変化に合わせて、今の形に落ち着いた、という方が近いです。

今の構成:法人=IT事業、個人=不動産賃貸(法人へ)+農業

現在の私の構成はこうなっています。

  • 法人:IT関連の事業。役員報酬は最低限に設定
  • 個人事業:法人に貸している不動産(家賃収入)と、農業

役員報酬を最低限にしている分、実質的な生活費・取り分は、法人から個人へ支払われる家賃でまかなっています。家賃収入(不動産所得)は、役員報酬のような社会保険料の対象にはなりません。

農業を法人化しない理由は、単純に面倒だからです。農地がからむ法人化には、農業法人としての要件など別の規制が関わってきます。個人のままの方が身軽に運用できます。

そもそも農業を始めたのも、老後への不安がきっかけです。ITでいつまでも食べていけるわけではない、という感覚もありました。放棄地は年々増え、農業の担い手は少なくなっている一方なので、今のうちから少しずつ商売にしておこう、と思って始めました。

法人から個人への家賃、税務署にどう見られるか

法人が、社長個人が所有する不動産を借りて家賃を払う、という形自体は、医者をはじめ広く行われている一般的な方法です。ただし、同族間の取引なので、家賃の金額が世間相場からかけ離れていないかは、税務署にチェックされやすいポイントです。

私の場合は、近隣の似た条件のテナントの賃料を何件か調べて資料を作り、税理士さんにその妥当性を確認してもらっています。相場からズレた金額を設定すると、経費として否認されるリスクがあるので、ここは慎重にやるべきところです。

個人と法人を分けるメリット、まとめると

  • 消費税免税期間のリセット:新しく法人を作ることで、条件を満たせば最大2年間、消費税の免税事業者になれる
  • 経費を作れる:役員報酬という形にすることで、給与所得控除が使える(個人事業の利益をそのまま受け取るより、税務上有利になるケースがある)
  • 社会保険料の圧縮:役員報酬を最低限に抑えれば、社会保険料の負担も最低限になる。その分の取り分を、社保の対象にならない形(家賃収入など)で受け取る
  • 法人化しにくい資産は個人のまま活用:農地など、法人化すると別の規制がかかるものは、無理に法人に寄せず個人事業のまま残す選択肢もある

ただし、役員報酬を極端に低くすると、将来の厚生年金の受給額が減る、傷病手当金などの給付が少なくなる、といったデメリットもあります。目先の社会保険料だけでなく、長期的な影響もあわせて考えるべき部分です。同族間の家賃設定も含めて、こうした判断は税理士さんと相談しながら進めるのが安全です。

次にやりたいこと

実は、法人でレストラン&BARをやりたいと、ずっと考えています。すでに お店の内装はほぼできているものの、コロナ禍や結婚、そして上で書いた農業の立ち上げなどが重なり、今は保留にしている状態です。事業の構成は、その時々の状況に合わせて変わっていくものだと思っています。個人的には、早くレストラン&BARをやりたいところです。