旅費日当は、法人化のメリットの1つ
法人には「出張旅費規程」を作って、出張のたびに日当を支給できる、という制度があります。日当は、規程に沿った金額であれば、受け取る役員・従業員側は非課税、法人側は経費にできます。個人事業主にはない、法人ならではのメリットの1つです。
ただし、これは出張の日数がある程度多くないと、あまり意味がありません。年に数日程度の出張では、非課税になる金額もわずかで、規程を整備する手間の方が大きくなってしまいます。
注意点として、この非課税の日当は個人事業主が自分自身に対して使える制度ではありません。個人事業主は雇用関係がなく、事業の利益がそのまま自分の所得になるためです。ただし、個人事業主でも従業員を雇っていれば、その従業員向けに旅費規程を作り、日当を非課税で支給することはできます。自分自身の出張が多い人がこの制度のメリットを直接受けるには、法人化して役員になる必要がある、ということです。
制作者談義:うちの日当設定と、宿泊を伴う出張の頻度
うちの場合、日当は平日1万円・休日2万円、海外は2倍に設定しています。この金額は、税理士さんに相談して決めました。
宿泊を伴う遠征が多く、年間60日ほど出張することもあります。土日をまたいで1週間〜という出張も珍しくありません。このくらいの日数になると、非課税になる金額もそれなりの規模になり、節税効果を実感できます。
日当は「食事代・宿泊費込み」で非課税、という制度の建て付け
日当は、出張中の食事代や細かい諸費用(場合によっては宿泊費相当も含む)を、領収書なしの定額でまかなえる制度です。実費を1つずつ精算するのではなく、「だいたいこのくらいかかるだろう」という金額を、あらかじめ規程で決めておく、という仕組みです。
食事代についても、朝食・昼食・夕食のすべてが対象です。自宅にいれば自炊で済むところ、出張中は外食やコンビニに頼らざるを得ず、自宅なら発生しなかったはずの出費になります。日当は、こうした「出張していなければかからなかった費用」をまとめてカバーする、という位置づけです。
出張先によっては、現地の取引先に宿を用意してもらうこともあります。つまり、実際には宿泊費が0円になる出張も、それなりの頻度である、ということです。
宿泊費が0円でも、日当をもらっていいのか?
結論から言うと、日当は「その日いくら使ったか」を精算する制度ではなく、あらかじめ決めた定額を、実費の証明なしに支給する制度なので、基本的には問題ありません。ホテル代が0円の日もあれば、想定より高くつく日もある、それを均せば妥当、という考え方です。領収書がいらないのが、この制度の一番のメリットでもあります。
ただし、リスクがゼロというわけでもありません。
- 金額の妥当性が前提:「社会通念上相当な金額」であることが条件です。同規模の会社・同業他社の水準と比べて、明らかに高すぎると否認リスクが上がります
- 毎回0円だと、制度の趣旨から外れてくる:たまに宿泊費が0円になるのは正常ですが、実質ずっと宿泊費がかからない出張ばかりなのに、宿泊費込みの日当を満額取り続けている状態が続くと、実費精算の趣旨からズレていき、税務署に「これは実質、給与では?」と見られるリスクは高まります
正直なところ、うちの運用がこの境界線のどちら側にあるかは、税理士さんと相談しながら判断している部分です。大きな声では言えませんが、実態としてこういう運用をしている会社は少なくないと思います。
なお、もしホテル代を実費で別途経費にする運用にするなら、日当の金額はその分減額するなど、二重取りにならないよう調整を検討した方がよいと思います。日当に宿泊費相当を含めた上で、さらにホテル代も満額経費にしてしまうと、さすがに説明がつきにくくなります。
ちなみに、QUOカード付きのホテルプランが人気なのも、こういう構造を考えると納得です。宿泊費を経費にしつつ、実質的な差額(QUOカード分)が手元に残る、という点で、日当と似た構図があります。
日当は「実費の払い戻し」ではなく「出張の労苦への対価」でもある
そもそも日当は、税務上も単なる実費の払い戻しではなく、出張に伴う諸雑費や、肉体的・精神的な労苦に対する対価という性格も持つ、というのが一般的な解釈です。だからこそ、領収書での実費精算が不要な制度になっています。
現地までの移動だけでも、正直、時給が欲しいくらいの負担があります。しかも役員には、そもそも残業代という概念がありません。出張中は1日8時間で終わることの方が少なく、移動・作業・打ち合わせで長時間になっても、それに対する追加の対価は基本的にありません。
日当を「ホテル代」だけの話として見るのではなく、「出張という行為そのものへのご苦労さん代」として見る方が、この制度の本来の姿に近いと思います。ホテル代・食事代がたまたま安く済んだからといって、それがまるまる不当な利益、というわけではありません。
とはいえ、これは金額の妥当性・出張実態からの乖離が大きすぎないこと、という制約と両立する話です。「労苦への対価だから、いくらでもいい」ということにはなりません。
旅費規程を作るときのポイント
- 日当の金額は、自己判断ではなく税理士さんに相談して決める(同規模・同業種の相場感を踏まえてもらえる)
- 出張の記録(日付・行き先・目的)は、規程どおりに運用している証拠として残しておく。車で移動した場合の高速道路のETC利用履歴は、日付・区間・時刻まで客観的に残るので、出張が実際にあったことを裏付ける根拠として特に有効。しかもこの高速代自体、旅費交通費として別途計上しているものなので、帳簿の記録そのものが出張の裏付けにもなっている
- 年間の出張日数が少ないなら、規程を整備する手間に見合わないこともあるので、無理に導入しなくてよい